【排ガス規制】触媒買取専門店が簡単解説!排ガス規制によって自動車業界に何が起きたのか知っていましたか?

知恵袋

排ガス規制と言えば、整備士の方なら皆さん耳にタコができるほど聞いている話題でしょう。

2022年EVシフトの波が世界中から日本にまで押し寄せ、トヨタがEV車のラインナップを大々的に発表するまでに至ったのは記憶に新しいと思います。

排ガス規制もそれらに関係して環境問題や世界の動きによって、さらに加速して厳しくなっていくことは否定できません。

皆さんはどれほどの年月をかけてきた規制が行われてきたかご存じでしょうか?さかのぼること、60年以上も前の話になります。

そう考えると、歴史の長い世界全体の取り組みですよね。

これまでに「排ガス規制」と聞いて、「なんだそれ?」と調べたことがある方も多くいるかと思います。

トラックのような中型・大型のディーゼル車両を整備されている方なら特に身近に感じる話題でしょう。

この話題について調べてみたところ簡潔にまとまった記事がなかったので、過去を少し振り返りながら触媒買取のプロが簡単にまとめてみました

さらっと確認できる内容にしたので、ブックマークやシェアなどで保存してもらえれば、いざというときサクッと取り出して確認してもらえると思います。

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排ガス規制とは?その歴史は意外と古い(世界編)

排ガス規制といっても、日本と世界と比べて少し内容も違ってきます。

主に自動車から排出されるガスに含まれる有害物質の量を規制する総称
自動車排出ガス規制と呼ばれています。

これには、様々な法律などが関係していますが、アメリカから始まり基準が作られていった背景があります。

そもそも排気ガスってなに?

日本における大気汚染防止法での定義としては、自動車及び原動機付自転車の運行に伴い発生する以下のものとしています。

・一酸化炭素(CO)
・炭化水素(HC)
・鉛化合物
・窒素酸化物(NOx)
・粒子状物質(PM)

粒子状物質は、黒煙の元となる「煤(すす)」などがそれにあたります。

【1963】アメリカから始まった!大気浄化法

1955年にアメリカにおいて大気汚染防止法が制定されましたが、問題提起にとどまり、 実は地方に規制の内容は委ねられていました。

1963年12月にアメリカで、「大気浄化法」という大気汚染防止のために作られた法律から規制が始まりました。

その後に改正を重ね、規制の基準を定め、対象となる問題の幅を広げていくことで、アメリカで環境問題に関わる最も重要な法律となっていき、これが国際的にも指針となり ました。

これらの環境問題を争点とした議論をリードしたのは、カルフォルニア州です。

州当局が国政にまで影響を及ぼし、日本が「2035年までに新車販売で電動自転車100% を実現」と指針を示した根拠ともなっています。

主に、大気汚染の防止、酸性雨対策、オゾン層の保護、騒音公害まで広くカバーされた 内容になっています。

有害汚染物質が何かを調べ、さらにそれらを排出している工場へ規制や、排出基準値を 定め、環境保護に向けた取り組みの根拠となっていて、元々は、機関車や自動車など、 乗り物に対しての規制はありませんでした。

【1970】(改正法)マスキー法

1970年に改正された通称マスキー法によって、全米で排ガス規制が始まりました。

内容は以下のとおりです。

1975年以降に製造する自動車の排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)の排出量を1970-71年の1/10以下にする
1976年以降に製造する自動車の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量を1970-1971年型の1/10以下にする

※炭化水素(HC)は、光化学スモッグの原因物質

これらを義務づけ、「達成しない自動車は販売を認めない」という厳しい内容で、当時は世界一厳しい基準といわれ、不可能ともいわれた基準値の物質もありました。9割を超える大幅な削減を求めたマスキー法でした。

現実的には対処は困難として実施は延期されました。さすがに無理だろ!とアメリカの最大手のビッグ3といわれる「GM」、「クライス ラー」、「フォード」がこれに反発し、反対運動、ロビー活動を行った ことによるものです。

この基準値を最初にクリアしたエンジンが1972年にホンダ(ホンダ技研工業株式会社)が発表したCVCCエンジンです。

翌年1973年には、COに加え、HCやNOxの規制が行われました。どんどん厳しくなっていきます。

1974年6月には、1970年改正法修正法が成立、実質マスキー法の正規規制値は実質的な廃案された上に、修正された規制値も、さらに2 年間の延期となりました。

1975年にEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)が延期発表するなど紆余曲折あったのが法律です。

マスキー法を守れなかったホンダは賠償金を支払うことに

大気浄化法に基づく制裁と1998年にホンダは排ガス制御システムを無効にした車両を販売し、違反したとして、アメリカに2億6700万ドル(およそ344億円)を支払いました。

アメリカは恐ろしいですね・・・

日本の排ガス規制を簡単解説(大気汚染防止法)

世界で最も厳しいと言われる日本の排ガス規制も歴史は古く60年以上の前までさかのぼります。

基本的な分類として、
◆単体規制
大気汚染防止法
◆車種規制
自動車NOx・PM法(特定地域のみ)
◆運行規制
ディーゼル車運行規制条例(一部都県のみ)

があります。

メーカーは新車を開発した場合、国へ申請を出します。サンプル車を国による検査のもと、型式指定を受けます。その後、量産されていきます。

それでは、時系列で簡単にまとめたので見てください。

1962年(昭和37年)ばい煙規制法 ⇒ 日本で最初の大気汚染防止に関する法律
1966年(昭和41年)日本で自動車の排出ガス規制が始まった。
1967年(昭和42年)中央公害対策審議会が発足(環境庁)。のちの環境基本法の施行に伴い、 1993年に廃止となる⇒「中央環境審議会」となる。
1968年(昭和43年)大気汚染防止法 ⇒ 自動車排出ガスが含まれたが大気汚染の改善はみられず、公害問題が発生
1970年(昭和45年)大気汚染防止法の大幅な改正が行われ、今日の規制の原型となる。
この頃、触媒メーカーは、成分の解析を禁じる契約をしていた。そのため、供給される ものに対しての信頼性は課題としていた。

1971年、「中央環境審議会」は1975年~1976年の2段階でマスキー法を導入することを決定。

1972年、トヨタは自社で触媒の研究開発から生産までをトヨタグループのみで手掛けると、独自開発を開始。そのための部署を設立する。同年にプラチナやパラジウムの安定供給のための契約を産出国と直接締結することに成功する。

のちに触媒の研究開発及び生産はアイシン傘下のキャタラーに引き継がれた

1973年(昭和48年)昭和48年排出ガス規制
1974年(昭和49年)環境庁聴聞会では、当時のトヨタ社長の豊田英二は「様々な開発を行 っているが、現時点で耐久性を十分確保したまま51年規制をクリアできる目処はたっておらず、実験室レベルでの成果も生産に反映するには尚数年の時間を要する」と答弁 した。

昭和51年規制の正規規制値適用を2年間先延ばしとする事で開発期間の猶予を求める。
トヨタを始めとする国内9社は技術開発に注力する。この猶予期間のうちに、51年規制 の適合できたのが、トヨタが開発したTTC-C方式及びTTC-L方式。

1975年(昭和50年)昭和50年排出ガス規制⇒CO・HCの基準値の大幅強化を図る規制
1976年(昭和51年)昭和51年排出ガス規制⇒NOxの大幅強化を図る規制。この時点では、世界で最も厳しい規制であった。
1977年(昭和52年)三元触媒方式をEGRなどと併用して採用し、昭和53年規制に適合した車をトヨタが販売した。(TTC-C方式と呼ばれる)

1978年(昭和53年)昭和53年排出ガス規制マスキー法の目標地を達成
その後、1~3年置きに排ガス検査を義務付け
1979年(昭和54年)省エネ法⇒一定規模以上の荷主はエネルギー消費量の届け出の義務化(平成 18年「改正省エネ法」に改正

1998年(平成10年)平成10年排出ガス規制アイドル規制値の強化
1999年(平成11年)平成11年排出ガス規制
2000年(平成12年)平成12年排出ガス規制⇒昭和53年規制がさらに基準値が強化される。低排出ガス車認定制度を導入

2001年(平成13年)自動車NOx・PM法⇒この規制によって、大都市圏(首都圏、近畿圏、愛知・三重圏)で指定された地域で、排出基準にクリアした車のみ走行できる。

2006年(平成18年)通称:オフロード法⇒公道を走行しない農業機械、建設機械などが対象となる規制
2010年(平成22年)「ばい煙量等」の測定結果の改ざんの事案が相次ぐ。事業者の責務に関する 規定の創設、罰則の強化を盛り込んだ改正。

ディーゼル車(トラック)の排ガス規制をわかりやすくまとめる

排ガス規制は、もちろんディーゼル車も例外ではありません。ディーゼル車は、法律とは別に、地方自治体によって条例という形で厳しく規制されてきました。

特にディーゼル重量車(総重量3.5トンを超える)には、厳しく規制が行われてきました。わかりやすくグラフになったものが以下の図です。

出典:「考資料2自動車排出ガス規制の経緯 (ディーゼル重量車)」(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/09/090325/02.pdf

グラフを見れば分かる通り、規制が始まった昭和70年代から比べると、ほぼ100%に近い数値で低減できています

自動車NOx・PM法とは?

平成14年に施行された法律で、簡単にいうと、指定されている地域で排出基準をクリアしない車は登録できません、街を走ったらダメですよ!という法律です。

その指定地域で車検が通らなくなります。

特に中古でトラック購入を検討している方は注意が必要です。ナンバーを確認すれば、登録情報を参照すれば適合車か否かはすぐに分かってしまいます

【排出基準 】

ディーゼル乗用車 NOx:0.48  g/㎞(昭和53年規制ガソリン車並)
PM :0.055 g/㎞(注)
バス、トラック (左欄の車両総重量に応じ、右欄の基準となります。)
1.7t以下 NOx:0.48  g/㎞(昭和63年規制ガソリン車並)
PM :0.055 g/㎞(注)
1.7t超2.5t以下 NOx:0.63  g/㎞(平成6年規制ガソリン車並)
PM :0.06  g/㎞(注)
2.5t超3.5t以下 NOx:5.90  g/kWh(平成7年規制ガソリン車並)
PM :0.175 g/kWh(注)
3.5t超 NOx:5.90  g/kWh(平成10、11年規制ディーゼル車並)
PM :0.49  g/kWh(平成10、11年規制ディーゼル車並)

【規制適否の表】(PDF)

トラック排出基準に適合していない使用可能日を確認する方法

排出基準に適合しない自動車は、一定の猶予期間後、使用できなくなりますの で注意が必要です。特に年式の古いトラックなどは要注意!
【排出基準に適合しない自動車の使用可能最終日の一覧表】(PDF)

所有されている車の最終日を調べるには、車検証の備考欄に記載されています。
【自動車検査証備考欄の記載内容の説明】(PDFファイル)

【ディーゼル】トラックの排ガス規制に関する型式まとめ

車両登録されるときに、型式の前側に-(ハイフン)をつけたアルファベット3文字の識別記号がつけられます。記載例はこちらがわかりやすいです。
自動車の識別番号について

識別記号がどの時期の規制に適合しているかの一覧はこちら
自動車排出ガス規制の識別記号一覧

上記リンクを確認してもらえれば、型式を見ればどの時期に、どの規制に適合している車なのかが分かる仕組みになっているか分かったと思います。

適合しない車は後付けDPFで対応可

規制値に適合していない年式の古い車は、都市部で走行することができませ ん。そのような場合は、一部車種で、後付けでDPF(Diesel Particulate Filter)をつけることができます。排ガスを綺麗にする装置です。

現行モデルは、基本的にこういった排気ガス浄化装置がついています。

乗用車の場合、三元触媒といわれる装置が、マフラーの前についています。
詳しくは下の記事にわかりやすくまとめています。
素人でも売れる!自動車触媒とは?仕組みと種類を年間買取3000本の プロが簡単に解説!

現在の日本の自動車排出ガス規制値まとめ

引用元:日本自動車工業会
https://www.jama.or.jp/operation/ecology/exhaust_gas/

2035年にガソリン車は売っちゃダメ! ZEV化の波がくる?

2012年、カルフォルニア州で年6万台以上を販売するメーカーを対象に、販売台数の一定比率を排出ガスを一切出さないZEV(ゼロエミッションビークル)にしなければならないと定めたZEV規制を始めました。これはハイブリッドなどを含まれています。

2020年9月に、アメリカのカルフォルニア州知事が、同州内で「ガソリン車の新車販売は2035年までに禁止する」と発表しました。

2021年に日本政府から発表された「2035年以降はガソリンエンジンやディーゼルエンジンのみの車両の販売を禁止する」という数字の2035年は、カルフォルニア州が推進すると取り組みと同じ年です。ちなみにトラックが2045年です。

ZEV推進の取り組みで、温室効果ガスを排出しない無排出車を販売し、さらに温室効果ガス35%削減、窒素酸化物の80%削減を目指すとしています。

今まで通りの車を作っていては生き残っていけない時代となってきました。
さらに競争は激化していきそうですね。

まとめ

・排ガス規制には、単体規制、車種規制、運行規制の3つからなる法律と条令で規制される
・規制が始まったのは、アメリカ
・日本では自動車に関する規制が、昭和41年から始まる
・段階的な規制は、各メーカーが研究開発してクリアしてきた
・ディーゼル車(トラックなど)を規制する特別な法律、条令がある
・ZEV化の波が押し寄せ、さらに規制は強化されていく

いかがだったでしょうか。排気ガスなどの環境汚染に関する法律は、リサイクル法や、国ごとに違う法律もありますので挙げればきりがありません。

日本国内の規制について、なるべくわかりやすくまとめたつもりですが、排ガス規制の歴史は長く、規制が強化されていく中で開発者の努力が今の車につながっていると考えると感謝の気持ちが湧いてきます。

車を買うときや、排ガス規制について調べるときの参考になれば幸いです。今後も規制強化については追っていきたいと思います。

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